風景プレートでの揉みと煎り試飲風景

 
私たちのちょっとスローな記録 私たちのオフィシャルな規約 私たちのメンバーになりませんか?



開催日:2005年5月29日(日)

参加人数:15名(梶、谷杉、田村、徳田、豊里、林(3)、前田(4)、毛利(2)、森)
   内容

2004年度第7回勉強会
「足柄茶訪問」

 

ペットボトル入りお茶、僅かな差異を競う説明的な大手飲料メーカーの(ペットボトル入りの)お茶のCF、カテキンなどお茶の健康機能性を謳う情報番組、静岡県内を走る新幹線の車窓からの茶畑、意外にお茶に接する機会は多い。ところが、馴染みはあるのに、実は何も知らない、実際の茶畑での茶摘み・お茶づくりは我々Y-Slowのメンバーでさえ多くが初、世間一般では、ほとんどの方が知らないというのが実情ではないか。

今回、過去2回のスローフードフェアにおいてお茶の提供を頂いている叶_奈川県農協茶業センターにお願いして茶摘みとお茶づくり体験となった。

1.足柄茶

足柄茶は大正12年(1923年)の関東大震災の産業復興策として茶の生産が始まったとのこと。

足柄を含む丹沢・箱根山麓一帯の急峻な斜面の山間気候は、茶の栽培に最適とされ、味・香りに優れる茶の生産が可能とされている。足柄茶は、茶の栽培、茶摘み、荒茶の生産までを生産農家にて行い、今回お世話になった叶_奈川県農協茶業センターが最終仕上げ・再製加工・販売および生産指導を行う生産・販売一体体制となっている

2.茶摘み体験

今回茶摘みをさせていただいた畑の茶はまだ摘まれたことのない若木とのこと。その栄誉(?)に浴することに嬉しさと「素人が摘んで大丈夫だろうか、若木を傷めてしまわないか・・・」との懸念も感じながら、初めての茶摘みに挑戦することになった。まず茶葉の摘み方について茶業センターの石渡さんに教えていただく。茶摘みの基本は「一芯二葉」=枝の先端にあるピンと尖った芯芽とその根元側にある2枚の葉を摘むこと。人差指、中指で一芯二葉の根元側の茎を挟み、挟んだ茎のあたりを親指で下に軽く押し下げると「パキッ」と小気味の良い小さな音をたて「一芯二葉」が掌に零れるように落ちてくる。若木の新芽の小気味良い感触を楽しみながら次々に摘んでいく。若木のため樹高が低いうえに(筆者は)日頃の運動不足と不摂生のため10分も経たないうちに足腰が悲鳴をあげ、感触を楽しむどころではなくなるが、参加メンバーの多くは熱心にひたすら摘んでいる。30分ほどで茶摘みは終了。

 
茶業センター石渡さんの摘方指南 一芯二葉(一芯は二葉に隠れている) 茶摘み風景

3.お茶づくり体験

茶業センターの会議室をお借りして、摘んだばかりの茶葉で早速お茶づくりにとりかかる。

家庭でもできる簡単な茶づくりを教えていただく。

@    生茶葉約50gをラップで包み、電子レンジで約1分程度加熱し、蒸す。

A    ホットプレートのうえで蒸した茶葉をほぐし、ホットプレートのうえで煎り、煎った茶葉を丁寧に掌で擦るように揉み、水分を飛ばす。

B    上記Aをひたすら繰り返す。最初のうちは手に粘りつくような茶葉の感触が徐々にパラパラとしてくる。その頃になると香りもたち始め、茶葉も見慣れた形になってくる。揉みの工程で粉状になった茶葉は十分に乾燥し焦げ易くなっているので、先に取り出しておく。

C    茶葉全体が十分に乾燥しパラパラとしてきた段階で、先ほど取り出した粉状の茶葉と混ぜ合わせ、仕上げの煎りを軽く行ってできあがり。

今回は参加者を3チームに分け、お茶づくりを体験したが、収穫したばかりの同じ茶葉を使ったにも係らず、3チームの味・香りはそれぞれ異なり、作り手の個性が味と香りに反映されるのではないかと思うほど違いがでたことも、お茶の面白さ・奥深さをさらに予感させる。ちなみに丁寧な作りをしたチームの茶は(素人にも係らず)上質の煎茶のような味・香りであった・・・と思う(“手前茶”ですが)。生茶葉が手に入るのであれば、茶づくりをぜひともお勧めしたい。所要時間は30分程度で思ったより手軽にでき、電子レンジでの加熱、揉み・乾燥、仕上げ、そしてお茶を淹れ、飲む、の各段階で香りの変化とその段階毎に異なる馥郁とした香りを堪能する、嗅覚フル稼働の経験は本当に得難いと思う。
試飲風景
4.お茶を嗜むということ

今回の茶摘みをきっかけに、幼いころの食後の団欒には必ずお茶があったことを思い出した。反省を込めて振り返ると、お茶を飲む頻度が減り、自ら持っていた日本の食文化のDNAを失いつつあることを実感することとなった。お茶のある家族の団欒、お茶のある友人・知人との会話をゆっくりと楽しむことなどほとんどない現状にしばし考え込んでしまった。健康志向のなかペットボトル入りのお茶を中心に「サプリメント化している=機能性食品化」している自らの“お茶環境”を「嗜む・楽しむ」に戻していくべき・・・と改めて思う。茶摘みから帰宅し、子供たちと“お茶を囲んだ”ことは言うまでもない。
5.お茶と日本食文化について

以前、静岡県の掛川市長(当時秦村市長)にお会いした際、「お茶と米食は密接な関係にある」との話しを頂いた。「日本人は米を食べなくなったからお茶の消費量が落ちている=もっと米食を!」がお茶どころの掛川市長としては消費量(生産量)を増やし市の活性化に繋げる役割として当然の発言ではあるが、その真意はお茶が日本の食文化の一翼に担っており、お茶を嗜む文化=米食を中心とした食文化を大切にしなければならないことを訴えておられたのだと思う。この話を茶業センターの石渡さんにお話したところ「米・味噌・茶の3点セットです」とご教示いただく。この日本食文化3点セットはその消費量に相関があるとのことで、我々スローフード運動に係る者として、まさしく日本食文化の基本となるお茶づくりを微力ながらも応援していかなければならないと思う

6.お茶の生産現場で感じたこと

良いお茶(銘茶)の産地は昼夜の温度差が発生しやすい地域=急峻な地形がほとんどであるとのこと。今回お世話になった足柄も急峻な地形の斜面で茶の生産を行っている。ところが生産農家での後継者不足・高齢化に伴い、急峻な地形での生産が難しくなっているとのこと。解決方法として茶栽培の機械化=斜面の平坦化となり、茶畑をつくるために林を切り開き造成工事をしなければならない状況にあると聞く。急峻なだけに、工事資金を要するだけでなく、工事の周辺環境への影響は大きいと思う。前掲の写真のように周辺を雑木が囲み地形に馴染んだ畝の続く茶畑に比較した時、茶畑の廻りの切り盛りをした造成工事跡の景色に、生業として丹精込めて茶づくりをされている生産農家やお茶業界の方々のご苦労・ご努力を重ね合わせると、なんとも複雑な思いを抱かざるを得ない。我々消費の側が日本の食文化を忘れつつあることが豊かな自然環境と共存してきた茶畑の姿を変えてしまっているのではないか、消費者側の問題として真摯に受け止めなければならないと思う。お茶に限らず、食(文化)が自然環境といかに結びついているかを改めて感じたのは、筆者だけだろうか?
7.Y-Slowとして何をしていかなければならないか

お茶についても、他の食材・食文化と同様に日本の食文化との係り、自然と人間の営みの共存関係など解決すべき大きな課題を抱えるが、まずはお茶の味・香りを楽しむ基本を大事にしていきたいと思う。今回我々が体験した面白さ・楽しさを伝えていきたいと思う。
お茶を飲むという行為を通じて、我々は日本の食文化を取り戻し、官能を磨き、身近な豊かな自然環境を維持し、もちろんお茶の健康機能性を享受できる。もっと美味しいお茶を飲もう。
■ 付録

茶業センターの皆さんのご厚意により、摘んだばかりの茶葉を天ぷらにしていただいた。若木の一芯二葉の天ぷらにした茶葉の香りとカリッとした食感も得難い。僅かに塩を振った茶葉の天ぷらは、初夏の味としてもビールとの相性は抜群で辛党には堪らないと確信する。生茶葉が手に入るならば、天ぷらもぜひともお試しの価値あり。

  (2005年7月 前田作成)

Copyright(C) 2003-2004 Yokohma Slow Food Association .All Rights Reserved.