■日本もすてたものじゃない
Q:
島村さんは、イタリアを中心に海外のさまざまな食を取材されていますが、最近の関心事は何ですか。
島村:
日本もちっともすてたものではないということ。すごく多様だし、(地方で)まるで違う。外海の漁師とリアスの漁師との性格も違うし、九州や山形、岩手など、かつては不便と言われた所に一人で何でも作ってしまう「すごい」人がいるし…、
一種、自然の達人ですよね。就労人口に入らないおばあさんたちも、地域で直売所などができたときには、一番貢献するスターなのね。
私は、イタリアに20年行き来をし、いわば専門性の高さからずっと食べてこれているわけで、イタリアから離れると、経済的にはきついんだけど、それでもはまらずにいられないのは、国内の頑張っている地域や食の話はどうしても夢中になる。例えば、日本で使われている飼料のほとんどはアメリカから輸入している。
するとアメリカは日本をコントロールしようと思えば、できちゃう。「日本には輸出しないよ」となったら、日本の農業、畜産はやっていけません。黒毛和牛なんてもちろん途絶える、そのシステムの中に入っているから。
ところが輸入飼料ゼロで頑張っている人がいます。コストは合わないけど、それが(牛にとって)健康で自然だろうと。
大多数に反旗を翻してやってきた人がいる。だから日本もすてたものじゃない、と思う。
そういう人に会うことが、今、結構、生き甲斐。すごく元気になる。
ほんと、そこの牛も元気なの。狭いところで飼われている牛は動かないから、爪がこんな(つぼめたような)形になっている。ところが放牧されている牛は、(大地を)踏ん張るから、爪がガシッと開いて力強い。
それにストレスを感じていないからか人に寄ってくるの。
こういう人や現場を皆さんにも見てほしい。自分で農業やっている人は、もちろんその先をいって実践しているわけだけど、スローフードがこんなに広まってきた核、根っこの部分が、(現場を見ると)ピンとくると思うんですよね。
言葉や理屈じゃなくて、「そういう人を応援しないでか」と、ね。消費者ができること。
食べておいしい、というだけではなく、良い食品を知って食べることで幾ばくかの還元ができるでしょ。
■得意料理は、エゾシカのグラーシュ
Q:
以前、島村さんにご自宅でエゾシカをご馳走すると誘われたことがありました。「エゾシカ!?」と思ったのですが、そこで興味が沸いたのが、島村さんの得意料理。どんな料理を作られますか。
島村:
エゾシカのグラーシュも結構、得意ですよ。
でも、それはオーストリア料理で、むしろ(ロシア人の)旦那のほうが、上手かな。
肉に親しんでいる年数が違うし、DNAが違うから。
私がまともに料理を作り始めたきっかけは、イタリアに行って、お金もないのに取材してお礼をしなきゃいけない、と思っても、お土産をいつも持っていくわけにいかないし。そこで、日本料理とか東洋のご飯を作れば、向こうの人は喜んでくれると思って、いろいろ作り始めたことなのね。例えば、もともとは宮廷料理だけど韓国料理の九節板(クジョルバン)。
お皿の上にニンジン、キュウリ、煮あわび、牛肉などいろんな具を細切りにして長さなんかも揃えないで大雑把に並べ、真ん中に小麦粉でクレープ状に焼いたものを置く。そのクレープ状のものにそれらの具を巻いてコチュジャンなどをつけて食べます。白人にも食べやすいし、ちょっとエキゾチック。本格的にはかなり高価なものだから、大衆化されてますけどね。
あとは、大衆化された参鶏湯(サンゲタン)とか(笑い)…。
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