第2回
舘岡 徹哉さん バナナ生産者
「私の作っているバナナを試食してくれませんか」
横浜スローフード協会にかかってきた一本の電話からつながったバナナ生産者・舘岡さん(沖縄)とのご縁。さっそく試食品を会員で味わってみた。舘岡さんから送られてきたのは青いものから黄色になった何段階かのバナナ。「美味い!!」マーケットでよく売られている外国産バナナとは異なる味わい。沖縄の島バナナは小笠原種だが、舘岡さんのバナナはブラジル種。甘みと酸味がぎゅっと凝縮され、段階ごとにそれぞれのおいしさがある。こんなバナナを作る舘岡さんってどんな人なの?素朴な疑問がわく。そんなときに入った沖縄行きの機会。ぜひお会いしてみたい。さっそく舘岡さんの畑へ向かった。

5段階のおいしさをもつバナナの壁

Q:
何段階かの熟成に合わせて試食させていただきましたが、本当に美味しいバナナですね。


舘岡:
今の仕立て方が理想ということではなくて、試行錯誤しているうちにこうなった。誰かから指導を受けたことは全然ないです。それこそバナナに聞けという感じ。だから自己流です。熱帯における栽培のマニュアル的なものを沖縄版に書き換えたということなんですが、マニュアル通りにはいかないです。いかに沖縄の地形に合わせられるか、台風を外して収穫できるか、それが容易ではない。
私は、元々、バナナに関心はなかったんですが、このバナナを作るようになってからいろいろなバナナを食べてみたんですが、これは面白いバナナだなあと感じています。沖縄特産の島バナナは、私(個人)が思うのは、一番おいしい時は一度で、(その見極めが)大変難しい。島バナナと私のバナナの違いは、皮の厚さです。私のバナナは、皮が厚いときも薄くなったときでもそれなりの味がする。どの時点でも良いというか。だからNo.1からNo.5まで番号をふって、(皆さんに)試食をしてもらいました。どれが一番いいかを私が知ることによって、じゃあここで食べてもらえばいい、またはここなのかと考えることは大変重要なことなんです。私は、自分のバナナがたいへん味に幅があると思う。
沖縄では、島バナナを食べたことのある人は、島バナナがいいと言います。皮が薄いほうがいいと。若い人は島バナナは値段が高いので、ほとんど食べない。普通の人に黙ってこのバナナを食べてもらうと、「ああ、島バナナだねえ」と言う。そこで、これはブラジルのバナナですと言うと、やっぱり島バナナのほうが美味しいという返事がくる。1番が島バナナで、私のバナナは2番目に美味しいと。この壁というのは理屈じゃない、たいへんなものだと思いますね。これが市場ではものの見事にでちゃう。

■台風をいかに避けるか

Q:
台風の影響で、畑のバナナの木を切り落とされたとのことですが


舘岡:
台風のときに葉っぱを2分の1切り、そしてまた3分の1落とすというマニュアルがあって、最初は一所懸命やりましたよ。でも葉っぱはそれこそいっぱいあるし、結局間に合わなくて。
バナナ作りというのは、実際やってみると意外と簡単。というのはバナナ自体に非常に能力がある。作る人に合わせていっちゃう。肥料をやってもやらなくてもそれなりに育ってしまう。台風に倒されても、また子供を出していきますから。これが他の植物だと、ひどい打撃を受けると枯れちゃうとか、肥料をやらなかったから駄目だ、となりますけど、バナナはまずそういうことがない。そこで水をどうかければどうなるかとか、人間の知恵というか、僅かな差で自分のバナナは売れて他人のは売れない、となる。
バナナというのは、花で言えば四季咲きなので、いつでも収穫できるんですが、台風の影響を受けて収穫が遅れていったりします。台風がこういうものだというのは、今頃ようやく分かってね。でも逆に、台風があるから面白い。もし台風がなかったら、みんな作るし、豊作になる。現時点ではそういうふうに考えているんですけどね。



■競争相手がいないことの弱さ

Q:

値段はどれぐらいになるのでしょうか?


舘岡:
試食してもらう前までは、食べてみて美味しいしもったいないと思うから、治産施設などにもっていったりしました。今回、試食というのを思い切りやってみて、経済大国の日本で国産バナナが本当にないんだなあと感じました。他の農作物はすごい競争相手がいるんですが、国産バナナは競争相手がいないんです。対象がないと(値付けとか)判断のしようがないと言うんですよね。今回、いろんな市場に送ってみたんですが、初めてということで、結局、向こうからいくらで売るのかと(聞かれた)。いくらで売っていいのかを知りたくて試食してもらったんだけど、向こうも値段を出せない。(東京の高級)青果店のバイヤーが、売りたいのでとりあえずやってみないかと。お金儲けではなくて他店との差別化のために。私の手取りはというと、マージンや運賃などを引き、人件費まで考えると結局、あまり残らない。今は地産地消で、農家の人が直売しますよね。あれでマージンが1割。島バナナは1キロだいたい600〜700円、いいもので1,000〜1,500円。それでもちゃんと売れている。そうなってくると、分からなくなる。あとは私自身がなんの目的でこのバナナを作っているか、そこに行きついてしまう。量を生産したくてやったわけではないし。
私の畑は1,500坪です。いくらで買ってくれるのか。おいしくて安いほうがいいとなると、この畑の面積ではとても対応できないですね。この先どうなるかは、さっぱり分からないですね。

■インパクトがあるバナナの今後

Q:

今後、どのように販売しようと思っているのですか


舘岡:
今は食べるものがいろいろあり、バナナを食べなければいけないという理由はどこにもないです。なにか特徴があって美味しくなければ、作る意味はないだろうと思います。
島バナナを作っている人は60代以上のお年寄りが多い。昔、私がバナナを作り始めた頃は3年に1回当たればいい、今は4年に1回当たればいいと言います。前はその意味が分からなかったんだけど、このバナナをやり始めてから、なるほどお金儲けで作っているわけではないんだなあと分かってきました。博打的というか。
最初は、計算上はとても儲かるんですね。島バナナの場合を私のバナナに当てはめて歩留まりや、いくつ売れてとか。実際にやってみると、俗な言葉で言えば、私ではお金儲けにはならない。販売まで、全部自分でやらなければいけないとなってくると…。それは、別の能力ですよね。
特農家というような要素はまだ全然やっていないんですよ。無農薬、無化学肥料とは言えますが、油かすや生の米ぬか撒いたりはしましたが、これで有機と言えるか。それでも美味しいと言ってくれる。このバナナが能力を持っている。今のところは十分にインパクトがある。今、マンゴーをみんなが作るようになって、値段が高かったり、わずかな違いで売れたり売れなかったりする。それに比べてこのバナナは全く敵はいないんですよ。このバナナは面白いと思って、売る能力があり、どこをつっつけばどうなると知っている人がいて、その人があるきっかけを作り、何かが崩れるとあとはばーっといくじゃないですか。だからこのバナナは私以外であれば、もっともっと世に出していけると思う。よくそういうことを考えますよ。

「たかがバナナ、されどバナナで、ほんとうに面白いと思う」と語る舘岡さん。だからこそ普通の売り方ではないユニークな販売ルートを考えたいという。この日、同行された共同経営者の堀川さんによると、舘岡さんは納得しないと次に進まないタイプだそうだ。沖縄でバナナ作りに挑戦している彼の今後の展開は、未知数である。いずれにしても、またあの「まーさん(おいしいの意味)バナナ」を食べられることを願っている。
 
          
(2004年9月)

プロフィール

舘岡 徹哉 さん

蘭の生産のため、秋田県から沖縄県に移り住んでやがて20年近くになる。この日、同行された堀川さんとは蘭の関係で職場が一緒だったとのこと。舘岡さんがバナナを作るようになったきっかけは、ブラジル帰りの知人からの誘い。沖縄からブラジルに家族で移民した方がその後沖縄に帰って来るときに持ってきた2つの種芋を植えたのがこのバナナ生産の始まり。この人から畑を譲りうけた。細い木にハシゴをかけ、一本一本丁寧にハサミで穫る作業は大変なのだそうだ。

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