スローフードという言葉は、ファーストフードとは逆の立場にある食べ物をさす言葉として、1986年にイタリア北部・ピエモンテ州にある某食堂のテーブルから生まれました。でも、スローフードは、イタリアの古い食品や料理のことでも、たんに<ゆっくり時間をかけて>食べることだけを意味しているのでもありません。そこには、私たちが食べることを楽しみたい、より美味しい物を美味しく食べたい……、といった願いが込められています。
 たとえば、自販機でコーラを買い飲みするよりは自宅でお茶を、そして、自宅でお茶を飲むならペットボトル入りではなく自分で入れて、さらに、自分でお茶を入れるなら昔からの方法で栽培されたお茶の葉を使う……。そういったことに、楽しさや歓びを見いだすのがスローフードなのです。
イタリアのスローフード/クラテッロ

 
流通の発達により、どこでも新鮮な魚が食べられるようになったが……
 こんな経験はありませんか?
 ──山奥の温泉宿に泊まり、楽しみにしていた夕食に、ズワイガニの鍋が出された……(ちなみに、現在、日本で消費されるズワイガニの多くはロシア産です)。そのカニ鍋をながめながら、何かヘンだ? どこかがオカシイ?……、と感じたら、あなたにはスローフードな感覚があります。……海から遠く離れた山奥なのに、なぜカニ鍋なのか? そんなカニ鍋よりも、その土地が培ってきた食材や食品を使った、そこでなければ食べられない伝統的な料理を食べたい!! それがスローフードの出発点です。
 ファーストフードは、いつどこで食べても変わらぬ味を売り物にしています。でも、特定の季節やその土地に行かなければ味わえない、個性的で独特な食品や料理は、いまどんどん消えつつあります。そんな味覚や、それを味わう喜びや楽しさを次の世代に伝えてゆくのがスローフードの目的です。いわば、W.W.F. が絶滅の可能性のある動物をリストアップする「レッド・データー・ブック」、ユネスコが貴重な自然や史跡を人類共有の財産として指定する「世界遺産」などの食文化版が、スローフードなのです。
   ちょっと、周りを見渡してください。私たちが子どものころには食べたのに、いつのまにか姿を消してしまった野菜や果物、保存食などがありませんか? 
 そうです!! スローフードは私たちの身の回りにあるのです。


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